説明するのは難しいという話

いまさらながら、人にわかるように説明するのって難しいよね、という話が職場で出た。その時に僕が思い出したのが、人力検索はてなのこの質問。

最近インターネットを始めてやっとYahoo!の使い方を覚えた位のレベルの主婦に教えるつもりで、以下の用語を易しく解説してみて下さい
question:1118307156

いろんな人が回答していて面白い。で、僕が驚いたのは、どう考えても「やっとYahoo!の使い方を覚えた位のレベルの主婦」にはわからないと思われるものが、意外と多かったことだ (回答者の方が気分を悪くされたらごめんなさい)。とくに、未説明の用語を使っているものや、略語の原型を書いているものが、かなりの数ある。他にも、質問者の id:Yuny さんからコメントされているポイントもいくつかあって、参考になる。
おそらく、そういった書き方をしている回答者さんのほとんどは、実際に「やっとYahoo!の使い方を覚えた位のレベルの主婦」を前にして話す時には、こんな説明はしないと思う。それが、PC に向かって文章化しようとした時に、どんどん難しくなってしまうのには、いろいろ原因がありそうだ。

説明する側も実はよくわかっていない

一番大きいのは、これだと思う。とくにコンピュータを仕事で使っているような人、コンピュータに強いといわれる人は、日常とかけ離れている概念であっても受け入れやすいタイプだと思う。「オブジェクト指向がすんなり習得できた」なんて人は、たぶんこのタイプだ。
で、そういう場合、主に経験を通じて「オブジェクトってのはそういうものだ」という理解をするので、いざ「オブジェクトって何?」って説明されると、うまく説明できないのだ。これを説明するには、オブジェクトそのものだけじゃなくて、オブジェクトが他とのものとどう違うのか、とか、オブジェクトという概念はどういう前提で使われているのか、とか、いろいろ考えていないとうまく説明できない。そこを無理にわかったフリすると、「オブジェクトってのは、データと手続きを一緒にしたものだよ」とか、「インタフェースってのは、オブジェクトが公開する操作を定義したものだよ」といったようなウケウリの説明を自慢げにやってしまうことになる。

既存の解説に釣られる

この質問の回答を見ていると、ネット上の用語辞典と同じ口調のが多いのも気になる。そして、そう思ってネット上の用語辞典を見てみると、わかりにくかったり説明になってないものって、意外と多いみたいだ。ひとつだけ例を挙げると、

ペイント系グラフィックソフトで用いるツールのひとつ。グラフィックデータを選択しコピー(カット)するときに使う。選択ツールを使うと四角や丸の範囲しか選択できないが、投げ縄ツールでは、絵の形のとおりに選択できる。四角や丸ではなく、選択しにくい形の場合に便利である。

アスキー デジタル用語辞典 - 投げ縄ツール

この説明は、投げ縄ツールの性質を列挙しているが、「投げ縄ツールとは何か」という問いに対する答えはすっかり抜け落ちている。で、こういう「わかったようなわからないような」書き方を普段目にしていると、自分が誰かに説明しようとした時に、つい同じような口調で説明してしまう、というのもあるかもしれない。

比喩の使いすぎに注意

これも、わかってる人には「あぁ、うまい喩えだな。確かにそんな感じ」と思えても、まったく知らない人にとっては意味がわからない場合がある。それも、「○○ってのは、××のことなんだ。まぁ、△△でいえば、□□みたいなものかな」というならともかく、いきなり「○○ってのは□□のことだよ」というのは危ない。説明する内容と共通点のあるものを使うのが比喩だけど、いきなり比喩だけ出てきても、案外わかりにくい。例えばだけど、いきなり

「オブジェクトとは何かって? うーん、オブジェクトってのは、昆布みたいなものだよ」

って言われたって、わからないでしょ、さすがに。

結論

説明するのって難しいね。ちなみに、上で例に出した「オブジェクト」は、いまだに僕がうまく説明できない用語の代表格だ。引用している「悪い説明の例」は、実際に僕が最近やっちゃったもの。ため息が出ますな。