少し前にあったことをメモ。
キネクトの衝撃
きっかけはこのムービーを見たことだった。これは Kinnect のプロモーション用ムービーで、公式サイトから転載されたものだ。作りがちょっと凝っていて、昔のテレビ番組のパロディになっている。僕が子どもの頃は矢追純一がしょっちゅうテレビに出ていて、「緊急特番・宇宙人解剖ビデオを極秘入手!!」みたいなのをやってたけど、ちょうどそんな雰囲気で淡々と Kinnect が紹介される。
で、動画の説明文に「元ネタ」へのリンクがあった。
第 3 の選択
リンク先で紹介されていたのは、イギリスの BBC が 1977 年に放送した『第 3 の選択』。ネットで検索してみると、当時 BBC が毎週放送していた科学番組 『サイエンス・リポート』で、最終回がちょうど 4/1 のエイプリルフールだから、ということで作られた「ウソドキュメンタリー」らしい (Wikipedia 日本語版では「4月1日に放送された」と書かれているが、他のいくつかのサイトを見ると、実際には放送予定が遅れたためエイプリルフールには放送されなかったようだ)。
さすが科学番組を毎週作っていたスタッフだけあって、終始 (一見) 真面目に話が進んでいく。
宇宙戦争 (ラジオ)
で、Wikipedia で「第三の選択」の記事からたどって陰謀論関連の記事をつまみ食いした。その中に、「宇宙戦争 (ラジオ)」という記事があった。H. G. ウェルズの SF 小説『宇宙戦争』を 1938 年にラジオドラマ化したものだ。あたかもその時本当に火星人が攻めてきたかのような体裁で制作されたために、視聴者が混乱して大騒ぎになった……という話を、以前に本で読んだ記憶がある。人間がいかにマスメディアの言うことを鵜呑みにしてしまいやすいか、という教訓になる話である。
と思っていたんだけど、この記事には次のようにも書かれていた。
ただし、このパニックについては、疑いも持たれている。当時新興メディアであったラジオに対して警戒心をあらわにしていた新聞がことさらにバッシングを行ったことが都市伝説化したものだとする説も有力である。
Wikipedia - 宇宙戦争 (ラジオ)
これを読んで僕は驚いた。驚いたということはつまり、「人間がいかにマスメディアの言うことを鵜呑みにしてしまいやすいか」という教訓を得たはずの僕が、その本の言うことを鵜呑みにしていたということだ。そのことに気付いて二重に驚いた。
さらに、気持ちを落ち着けて上の記述を読みなおしてみると、この記述自体の信憑性もよくわからない。特に出典は記載されておらず、ネットでちょっと探してみても根拠となるような記述は見つからなかった。「疑い」を持ったのは誰なのか? 「警戒心をあらわにしていた新聞がことさらにバッシングを行った」と主張したのは? それを「有力である」で評価しているのはどういう人なのか?
いずれにしても、1938 年当時の話なんて今から決定的な証拠が出てくることは期待できなさそうだし、仮に「決定的な証拠が出ましたよ」と言われても、僕の知識では正当性を判断できないだろう。本当はどうだったのかは、少なくとも僕にとっては永遠の謎になってしまった。
広げて考えれば、この話に限らず、何かを確実に真実だと断言するのは難しい、ということになるんだろうな。常に「自分がいま認識している限りで言うと」という前置きが付く。わかった気になって他人を責めたりすれば、いつかどんでん返しが起きたときに公開することになる。だからと言って何でも判断を留保すべきだとは思わないけど、自分の知らないことがあることは知っている、くらいの謙虚さは持っていたいところだ。