Stephen Elop 氏が会社を "売り飛ばす" のは 2 度目?

Nokia 関連のニュースを探している途中、2ch の Qt スレッド経由で知った話。
今回 NokiaMicrosoft との提携――そして Symbian 廃止を決めた Stephen Elop 氏は、実質的に Nokia をタダで売ったようなものだとして、Nokia ファンや Symbian 開発者から批難されている。前職が Microsoft とあって「もしや Microsoft のスパイだったのか!?」なんて話も出ているけど、そもそも同氏が自社を ”売り飛ばす” のは、これが初めてじゃないらしい。

Macromedia をスピード売却?

Stephen Elop 氏の経歴として「Nokia の前は Microsoft にいた。MacromediaAdobe にいたこともある」などと紹介されている記事が多いが、実は MacromediaAdobe に売った張本人が Elop 氏なのだという。

Elop 氏が Macromedia に入社したのが 1998 年。その後 COO 等を経て CEO 就任が発表されたのが、2005 年 1 月 19 日のこと。

Macromedia - Press Room : Macromedia Names Stephen Elop Chief Executive Officer; Rob Burgess Continues As Chairman (Macromedia のプレスリリース)
http://www.adobe.com/macromedia/ir/macr/news/2005/q305_pressrelease02.html

それからわずか 3 ヶ月後の 2005 年 4 月 18 日、Adobe による Macromedia 買収が発表された。

アドビ システムズ社がマクロメディア社を買収 (Adobe のプレスリリース)
http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/200504/20050419macromedia.html

合併後、2005 年 12 月から Adobe の「ワールドワイド フィールド オペレーション担当プレジデント」となった Elop 氏だが、1 年後の 2006 年 12 月には Adobe を退社。

ネットワーク機器メーカーの Juniper Networks で COO、Microsoft でビジネス部門担当プレジデントを務めた後、2010 年 9 月 21 日付で、Nokia の CEO に就任することになる。

Nokia appoints Stephen Elop to President and CEO as of September 21, 2010 (Nokia のプレスリリース)
http://www.nokia.com/press/press-releases/archive/archiveshowpressrelease?newsid=1443731

そして、就任から 5 ヶ月弱経った 2011 年 2 月 11 日、NokiaMicrosoft との提携が発表された。

Nokia and Microsoft announce plans for a broad strategic partnership to build a new global ecosystem (Nokia のプレスリリース)
http://www.nokia.com/press/press-releases/showpressrelease?newsid=1488007

Qt は Macromedia Director と同じ道をたどるのか?

MacromediaAdobe に売却されたとき、何が起きていたのだろうか。

ブラジルの開発者、Mauricio Piacentini 氏が、blog で当時の様子を語っている。

Code diary - Elop is after me
http://piacentini.blog.br/2011/02/elop-is-after-me/

Piacentini 氏は、Macromedia Director 向けの Xtra (プラグイン) をサードパーティとして開発・販売していた。CD-ROM 向け等の「マルチメディア」コンテンツに Director が引っ張りだこだった頃で、全世界で開発者が 30 万人以上いたという。

ところが、Stephen Elop 氏が Macromedia の CEO に就任して数ヵ月後、Adobe への売却が突如発表された。Director は主流の製品ラインから外され、有償製品として存続させるために必要な最低限の投資しかされないようになってしまった。今ではユーザも激減。当時 Director で開発されていたコンテンツが細々とメンテナンスされているだけとなり、40 社ほどあった Xtra (プラグイン) の開発・販売会社も 1〜2 社になってしまったのだという。

Piacentini 氏は Qt の今後について、Director と違ってオープンソースであること、したがってコミュニティが開発を継続であることを指摘しつつも、実際には Nokia の支援を失った Qt の開発を続けていくのは困難な道程であると考えている。"elopcalypse" (世界の終わりを意味する apocalypse のもじり) はこれで 2 度目になるが、Qt がこの事態を乗り切るためには、開発を KDE コミュニティに移管して、真にオープンな開発体制を築くことが必要だと Piacentini 氏はまとめている。