PSN 5/1 会見: 何に対する補償? 各メディア読み比べ編

5/1 に行われたソニーの記者会見。「お詫びと感謝」で PlayStation Plus を 30 日間無料にするらしいけど、これは何に対するものなのかがよくわからない。
4Gamer.net の解説記事「個人情報流出の二次災害に注意せよ! PlayStation Network不正アクセスに関する記者会見詳報」を読むと

サービス停止に対して 個人情報漏洩に対して
・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・一律の補償はなし
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

ということらしい。で、この辺の区別がうやむやにされてるのは問題だ、というのが 4Gamer.net の記事で触れられている。
別に「金よこせ」とは思わないんだけど、個人情報漏洩に対して全員への補償をしない、というのは本当なのだろうか。これってある意味、新手のノーガード戦法だよね?

4Gamer.net

まずは 4Gamer.net の記事から見てみる。プレゼンの内容を伝えている部分では、単に「お詫び」とだけ書かれている。

■お詫び

  • 特定コンテンツの無料ダウンロード
  • 定額制サービスパッケージ「PlayStation Plus」の30日間無料加入。加入者には30日間無料提供
  • Music Unlimited powered by Qriocity会員向けに30日間無料提供
  • これ以外にもさまざまなサービスを提供。地域ごとのサービスもある
4Gamer.net - 【速報】ソニー,PSNへの不正アクセスに関する記者会見を実施。PSNのサービスは段階的に再開 ※15時50分頃更新

後半の一問一答部分で該当するのは以下の部分。

Q.金銭的な保証は考えているのか?

A.(平井氏)お客様の情報を保護する観点からの施策と,ネットワークサービスが止まってしまったことへの無償提供は分けて考えている。補償についてはクレジットカード情報の漏洩の根拠がない,不正使用の実績がないという状況だが,不正使用が確認されれば,個別の対応をさせていただく。

(中略)

Q.個人の情報が漏洩したことに関する補償をどう考えているのか。退会について,27日まではできないとしていたのに,28日に「退会したい場合は連絡してください」と書き換えていたが,これはどうなのか。

A.(平井氏)従来は,退会にあたって,ウォレットの中身を使い切ってもらっていたが,今回はrefundについて個別に対応する(システムとしては対応していないので)。個人情報が漏洩した可能性については申し訳ないと思っており,それが実際の被害につながった場合には,個別に対応させていただきたい。

4Gamer.net - 【速報】ソニー,PSNへの不正アクセスに関する記者会見を実施。PSNのサービスは段階的に再開 ※15時50分頃更新

で、上にも書いたけど整理するとこう。

サービス停止に対して 個人情報漏洩に対して
・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・一律の補償はなし
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

Impress GAME Watch

ユーザーに対する対応については、サービスを停止したことに対してお詫びの意味も込め、特定コンテンツの無料ダウンロード、定額制サービスパッケージ「PlayStation Plus」の30日間無料加入、および現行会員に向け30日間無料で提供、「Music Unlimited powered by Qriocity」会員に向けに30日間無料で提供などを行なう予定であるほか、各国によって様々な対応を行なっていくとしている。

 さらに同社はクレジットカードなどの被害があった場合、クレジットカードの再発行時にかかる手数料の負担など各種保証に関しても検討中だとしている。ただしこれは被害があった場合で、それ以外の「情報漏洩があったこと」に対して全ユーザーに一律に保証を行なうかどうかについては言明しなかった。

Impress GAME Watch - ソニーとSCEI、PlayStation Network/Qriocity不正アクセス問題に関する説明会を開催 平井一夫氏「誠に申し訳ございませんでした」

「お詫びの意味も込め」の「も」がよくわからない。「言明しなかった」という書き方もなんか曖昧な感じだけど、まぁ 4Gamer.net に近いかな?

サービス停止に対して 個人情報漏洩に対して
・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・(一律の補償については不明)
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

SankeiBiz

産経新聞社のビジネスニュースサイト。概要を伝える短い記事では以下の通り。

ソニー平井一夫副社長は1日、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)3」向けのインターネットサービスから大量の個人情報が流出した問題で記者会見し、利用者へのおわびとして、一部のゲームなどを無料で提供すると発表した。

SankeiBiz - 【PS3情報流出】ソニー情報流出で、利用者にゲームを無料提供 FBIに捜査要請も

一問一答をまとめた記事の方に以下の記載がある。

−−利用者への補償で、金銭的なものはあるのか

 平井副社長「個人情報保護のサービス提供やカード再発行の手数料などと、コンテンツ、サービスの無料提供は、分けて考えている。その中で、補償は、クレジットカード情報の漏洩は分からないが、被害の事実が確認されれば、個別の対応をさせていただく」

SankeiBiz - ソニー情報流出会見】(4)おわびの無料ゲーム提供「数千円分」

−−被害を受けた場合の補償の支払額はどれくらいを考えているのか

 平井副社長「実際に情報が漏洩しているかいないか確定していない。不正使用の事実も出ていない。仮に個人的な被害が出た場合、個別に対応する」

SankeiBiz - 【ソニー情報流出会見】(5完)「正常な動作で侵入、検知できず」 (2/2ページ)

SankeiBiz の記事を素直に読むと以下の通り。記事タイトルでも本文でも、個人情報漏洩への対応として書かれている。一律の〜という話は、コンテンツやサービスの無料提供に加えて、「+α」で金銭的な補償をするかどうか、という扱いになってるのかな。
産経の記事は、今回読み比べた中で最も「2 つをごっちゃにしている度」が高いみたいだ。

サービス停止に対して 個人情報漏洩に対して
? ・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・一律の金銭的な補償はなし
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

日経 ITpro

まずは概要記事。

会員に対する補償は、ゲームや音楽など一部のコンテンツを無料配信するほか、国によってはクレジットカードの再発行費用なども負担する予定だ。ただし、全会員一律の金銭面での補償については否定した。「現段階ではクレジットカード情報が漏えいしたという根拠がなく、さらに不正使用があったという証拠もソニーは把握していない。もしそうしたことが起きたら何らかの対応を考えるが、現時点では被害は出ていないと認識している」(平井副社長)。

「既知のサーバー脆弱性が原因」、ソニーが個人情報漏えい問題で経緯を説明

一問一答の記事は、該当する部分が「読むには会員登録が必要」扱いになってるんだけど、比較のために引用させてもらう。

―― 一律の補償は考えているのか。

 個人情報の保護に関する施策と、ネットワークサービス停止に対する施策を、分けて考えている。前者については、クレジットカード情報が漏えいしたことがはっきりしていない。逆に不正使用があって、何らかの被害が確認できたら、個別に対応する。

(中略)

―― 過去には、個人情報の流出時において精神的な苦痛などに対する対価として、一律に補償するケースがあった。ソニーとしては、どれくらいの予算、規模を考えているのか。また、4月28日に退会が認められるように規約を書き換えている。この姿勢は正当なのか。

 現時点ではクレジットカード情報の漏えいが確定できていない。不正使用の事実も出ていない。仮に被害が出たときには、個別に対応していく。個人情報については、ご迷惑とご心配をおかけしていることについては申しわけなく思っている、被害があったときには対処させていただきたい。

「現時点で被害はない」「攻撃には断固とした姿勢で臨む」---ソニー記者会見の一問一答

日経は、一問一答では「分けて考えている」とはっきり書いているのに、概要記事では SankeiBiz と同様のようだ。

サービス停止に対して 個人情報漏洩に対して
? ・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・一律の金銭的な補償はなし
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

時事通信

概要記事のみ。

 個人情報が漏えいしたのは、ゲーム配信サービス「プレイステーション・ネットワーク」とビデオ配信サービス「キュリオシティ」。最大7700万人分の情報が登録されている。利用者にはサービス再開時にパスワードの変更を求める一方、サービス停止の見返りとして、定額制サービスを期間限定で無料提供する。
 このうち約1000万人が登録しているクレジットカード情報に関しては「盗まれた可能性は低い」(長谷島真時業務執行役員)と説明。金銭補償は、具体的な被害が確認された場合に個別に対応するとしている。

ソニー、顧客情報流出を謝罪=「サイバーテロ」、FBIに捜査依頼

なんか中途半端というか、さらっと読むと勘違いしそうな書き方だ。「サービス停止の見返りとして」という記述はあるんだけど、4Gamer.net の記事で指摘されてたような「個人情報漏洩自体に対してはどうなの?」という記述がない。あえて書くと

サービス停止に対して 個人情報クレカ情報漏洩に対して
・特定コンテンツの無料ダウンロード
PlayStation Plus 30 日間無料 等
・クレカ情報が悪用された場合は個別に対応

結論は?

なんかよくわからない。記者によって解釈に違いがあるのかな。
仮に 4Gamer.net の記事で言うところの「うやむや化」が、一律の金銭的補償を回避しようというソニーの作戦だったとすると、産経・日経・時事通信はうまいこと作戦にはめられちゃってることになりそうだけど、逆に「無料でうんぬんはサービス停止についてでしょ?」とはっきり書いているのが 4Gamer.net しかない (Impress GAME Watch もこっちに含めてもよさそうかな?)。