乗算記号の省略

もう流行りが終わったっぽいから書いても大丈夫かな。


「6÷2(1+2) = ?」の話。僕は 1 と答えた。

「正解」の解説によれば、乗算記号の省略は、そのまま字面上の省略にすぎないので

6÷2(1+2) = 6÷2×(1+2) = 9

だ、ということなんだけど。だとすると、「a2b÷ab」なんかも、

a2b÷ab = a2×b÷a×b = ab2

になるのか?
正直、解説を読んでもなお違和感があって、「ほんとー?」と思ってしまっている。「自分の間違いを認められないんだろう、つまらない人間だな!」とか言われそうだけど。
書いてないのは乗算記号が省略されただけ、というのが正しいとすると、数と変数をくっつける時には数を前に出せ、と教わったのと整合性が取れないような気がする。つまり、「正解」にしたがうなら

32b÷3b = 32×b÷3×b = 3b2

だけど、この場合も僕はやっぱり3と答えるだろうと思う。

1で合ってるよ派もいる?

いくつかのサイトでは、静岡大学教育学部・熊倉啓之助教授の論文が紹介されていた。

実は,かけ算記号の省略については,中1の「文字と式」で扱うが,
「かけ算記号が省略された部分については,優先して計算を行う」……★
ことについて,きちんと指導している教科書は一社もない。もちろん,中2の「式と計算」でも同様である。

乗除混合演算式についての理解と指導に関する研究 : A÷B×CとA÷BCのタイプの式に焦点を当てて

これに従えば「6÷2(1+2)」は 1 だろう。わざわざ★印が付けてあって、以降その説明が詳しく書かれているので、少なくともこの熊倉助教授が「かけ算記号が省略された部分については,優先して計算を行う」と認識していることは間違いない。
とはいうものの、この主張が「正しい」かどうかは、これだけを読んで断言していいのかどうか、僕にはわからない。熊倉助教授が (僕と同じように) そう思い込んでいるだけで、実はそうじゃないから「指導している教科書は一社もない」のかもしれない。あるいは、「日本の教育課程では『優先して計算を行う』と教えているが、全世界的にそう統一されているわけじゃない」なんて話もあるかもしれない。

1 が間違いだとは書いていない?

日本でこの「6÷2(1+2) = ?」についての話題を紹介したサイトの記事を見ると、タイトルは

「6÷2(1+2)=?」という小学生レベルの問題? 大勢の人が「1」と答え半分以上が不正解

と書いてあるのに本文中には

記者も数学者数名に話を聞いたところ人によって解がことなり、そもそも問題の書き方がおかしいという指摘があった。
電卓で計算した結果も計算機毎に結果が異なる始末だ。

と書いてある。つまり、本文では 1 が不正解だと断言されていない。だったらなんでこのタイトル、という気がするけど、ただの釣りなんでしょうね。
というか、読み直してみると、そもそも誰が出題して、「1 は不正解だ」と言っているのかすら書いてない。冒頭では「台湾のfacebookコミュニティにて算数の簡単な式を出題したところ多くの人が間違った解答をしたという」と書かれているが、「台湾のfacebookコミュニティ」というのもよくわからない。リンク先が台湾・蘋果日報の記事だというだけで、元々の出題をしてるのは Michael Carras という人だ。この人のプロフィールページには UCF と書いてあるから、たぶんセントラルフロリダ大学の人だよね。
「1 は不正解だ」と言っているのは、蘋果日報の記事に出てくる専門家 (台湾・国立台北教育大学の王富祥教授とか)、という理解でいいのかな。

数式の書き方は誰が決めているのか?

そもそも乗算記号って日本だと「×」だけど、海外だと「・」を主に使う国もあるんじゃなかったっけ (内積外積の話じゃなくて)。数学で、記号の使い方とか数式の書き方って、誰かが決めているというよりは使い手の慣習によってるのか?
その辺を解説したサイトとかないかなー。と思って探しているうちに午前 3 時を過ぎたので、結論出てないけど寝る。