あんまりよくわかっていなかった、PC ブラウザ向けの広告ブロッカーについて調べたら、なかなかややこしかった。
主に英語版 Wikipedia の情報による。
全体図
(クリックで拡大)
広告ブロッカーごとの歴史
Adblock
- 2002 年、デンマークの大学生 Henrik Aasted Sorensen 氏が Firefox 向けに Adblock 0.1 をリリース
- しかし、このプロジェクトは徐々に停滞するようになり、2004 年の Adblock 0.5 を最後に、開発が止まってしまった
- 2006 年にはプロジェクトが完全に破棄された
Adblock Plus
- 2004 年、Michael McDonald 氏が、Adblock 0.5 から fork して機能を強化した Adblock Plus 0.5 をリリース
- その後開発を引き継いだ Wladimir Palant 氏が最初から作り直したため、2006 年の Adblock Plus 0.6 以降は別物になり、名前だけ引き継いだ
- 2011 年に「控え目な広告」を導入。邪魔にならない程度の広告を許容する機能
- 料金を払った企業の広告をホワイトリストに追加するようになったため批判を呼んだ
AdBlock
- これは B が大文字。前述の Adblock とは関係ない
- 2009 年、Adblock Plus を参考にして、Chrome 向けに Michael Gundlach 氏が開発した
- 当時はまだ、Adblock Plus の Chrome 版はリリースされていなかった
- 2015 年、何者かに売却された。また同時に、AdBlock が Adblock Plus と同じ「控え目な広告」の枠組みに参加した
- しかし「買収先が名前を出さないよう求めている」として、一体どこに売却されたのかは公開されなかった
uBlock
- 2014 年、Raymond Hill 氏が開発した、新興の広告ブロッカー
- 当初は μBlock という名称だったが、のちに uBlock に改名
- 2015 年、Hill 氏は開発から抜けることになり、当時の開発チームに後を任せたが、そのうちの 1 人である Chris Aljoudi 氏がプロジェクトを私物化し始めたため、Hill 氏は uBlock Origin という名称で自ら開発を続けることを宣言した
- 下記に、Hill 氏による説明の、第三者による日本語訳がある www.reddit.com
- 残った Chris Aljoudi 氏は、ublock.org というサイトを作って 「uBlock」の開発をちょこちょこ続けたが、2017 年には開発が止まってしまった
- 2018 年、AdBlock に買収された
uBlock Origin
- 前の項で書いた通り、uBlock のオリジナル開発者である Raymond Hill 氏が開発している
- なお、uBlock Origin からさらに fork した広告ブロッカーとして Nano Adblocker がある
- これは、サイト側が広告ブロッカーを無効にしようとすることへ対策するための拡張機能である Nano Defender との連携を簡単に行えるようにする等したもの
その他
- 前掲の図には載せなかったが、他にもいくつか、PC ブラウザ向けの広告ブロッカーがある
感想
プロジェクトの fork はよくあることなので、そこはいいんだけど、それ以外の不穏な動きが多すぎる。
- AdBlock を誰が買収したのかわからないのもそうだし、その AdBlock が uBlock まで買収しているのも、どういう意図なのか今後が気になる。
- uBlock と uBlock Origin の流れは、CI コンテナの Hudson と Jenkins の関係に似ていると思った
- 「物理的には」uBlock Origin と Jenkins が fork した側だけど、オリジナルの開発者やその支持者は、「精神的には」自分たちが本流だと思って開発を続けているだろう
- せっかく乗っ取ったプロジェクトなのに、uBlock も Hudson もその後開発が長続きしていない、という共通点もある。
今回挙げた中から、今の時点でひとつ選ぶとしたら、どうなるかな。
Chrome や Firefox なら、uBlock Origin か、その派生の Nano Adblocker がよさそう。性能もいいらしいし。ただし、どちらも Safari や Edge には対応していない。
Safari 用には、入れるとしたら 1blocker かなぁと思っていたけど、ストアのレビューを見るとまだ動作が安定していないらしい。
Edge は……使ってないからいいや。