淘汰が始まる? 携帯向けブラウザアプリ

選択肢が増え、ひとつのジャンルとして確立しつつある、携帯向けのブラウザアプリ。しかし、そろそろ撤退するところも出てきそうな気がする。

主な登場人物

確か goo が提供しているのもあった気がするけど、全く知らないので省略。あと、OperaNetFront はここでは含めない。

これまでのあらすじ

jig.jp が、携帯サイト向けブラウザ「jig アプリ」に続き、フルブラウザjig ブラウザ」を発表。jig ブラウザでは毎月 1000 円超の利用料金がかかるという強気の発表も合わせて、注目を浴びる。
後を追うように登場したのが、広告ベースのビジネスモデルを採用した Scope、サイトスニーカーibisBrowser。利用者は無料で使えるという作戦が功を奏し、ライト寄りのユーザを取り込むことに成功する。また、KDDI による ez アプリ (Java) の切捨てに反発したユーザからは、機能を絞ったブラウザアプリ AntiSpirit が登場していた。
2005 年夏、jig ブラウザのタブブラウジング対応に合わせ、サイトスニーカーがタブ対応。ibisBrowser は、タブ対応の有料版「ibisBrowerDX」を発表。アプリ間の競争が激化していく。一方 Scope は、追加したメールリーダ機能に ID・パスワードを漏洩してしまう脆弱性が発見される。事態を隠そうとする開発元プログラマーズ・ファクトリーに、ユーザは不信感を募らせるのであった。
混迷を深めるブラウザアプリ界。いったいどうなってしまうのか……!

知ったか解説

まず、火付け役になった jig ブラウザについて。開発元の jig.jp はこれの前に jig アプリを出している。これも月額課金 (たしか 300 円)。ここまでが表設定だが、jig.jp の中の人に注目すると、さらにその前に「半パケ」というアプリも出している。機能的にはほとんど jig アプリと同じだったと思う。で、「半パケ」も確か月額 300 円だった。うろ覚えの記憶では、無料版のアプリも出してたことがあったような気がするので、それが事実なら、どんどん「利用者からちゃんと金を取る」という姿勢を固めていっていることになる。
ちなみに、jig ブラウザには無料版もあるが、これは元々エイプリルフール用に作った「10KB 版」を流用したものだと考えられている。1 日 10 ページしか閲覧できないという制限も 10KB 版と同じであり、「せっかく作ったから、他社つぶしの道具として使っておくか」くらいの意味しかないように思う。
で、そうやって jig.jp が課金体制を整えているのは、経験的に「ブラウザアプリは広告料だけじゃ食っていけない」ということを知っているからではないか、と僕は考えている。これを裏付けるのが ibisBrowser(DX) が今になって課金方式に乗り換えてきたことだ。
で、この時期に大失敗しちゃったのが Scope。公開当初にも、ダウンロード数をめちゃくちゃ水増し発表しちゃってたり、アプリのレスポンスが悪かったりとつまづきまくっていた。改良後に "Scope Episode II" と銘打って再公開を果たしたわけだけど、この時期に来て脆弱性を隠匿し続けるという態度を取ったことで、信頼度が大幅ダウン中。当の脆弱性は修正されたって話だけど、中継サーバのログには ID・パスワードが記録されていると思われ、その管理を任せていいのかは判断つかない。
個人的な印象だけど、プログラマーズ・ファクトリーって、プログラマー (趣味か仕事かは知らない) が同人ノリの延長みたいな感じでやってたんじゃないか、という気がする。バージョン番号にウケ狙いっぽい文字列 (「少佐専用」とか「郵政民営化」とか) が入っていたり、ブログで「それをやると機種ごとにソース分けないといけないから対応しません」と開発者論理を持ち込んでいるあたり。
ちなみに、AntiSpirit はこういった競争と無縁のところにいる。が、タブブラウジングに対応したのは、jig や ibis よりも AntiSpirit が先立ったりする。

予告

Scope の今後は、提携先のエキサイトが契約し続けてくれるかにかかっている。もし切られたらサーバ稼動できなくなって終わり。
サイトスニーカーは、同じ会社が提供している他のビジネス向けサービスと連携できるので、なくなることはないかもしれないが、その分「必死度」は足りなそう。
ibisBrowser(DX) は、無料・有料が相乗効果を出せれば生き残っていけそうだが、実際には「有料に乗り換えるときに jig ブラウザと比較検討する人が多い」といった理由で、思ったほどいかないかもしれない。最悪の場合、まず無料版廃止→ついで有料版廃止という流れで消えていくおそれもある。
jig は結局最後まで生き残りそう。金を払わない人お断り状態なので、jig から逃げた人が他のアプリに、という流れも当分続くものと思われる。
AntiSpirit は個人レベルでいじれる唯一のブラウザアプリだが、現状既に消える寸前 (対応端末台数が減ってるので)。開発体制整えたり他キャリア版も検討したりすると、まだまだ消えずに行ける可能性はある。