昔話をするのは好きじゃない。ただ、急に昔話をしたくなることもある。
注意: 以下の文章に有益な内容は含まれていません。これを読むことは、あなたの時間を無駄に消費します。お酒は 20 歳になってから。
ホワ、ホワ、ホワ、ホワ、ホワァ〜〜ン (←回想シーンに入った音)
引き金になったのは、動画サイトにアップロードされていた、IE4の新機能を紹介するビデオ。
- Internet Explorer 4.0 紹介ビデオ(前半)
- http://www.nicovideo.jp/watch/sm5284266
- Internet Explorer 4.0 紹介ビデオ(後半)
- http://www.nicovideo.jp/watch/sm5284412
IE4 は、Microsoft が初めてブラウザで「本気を出した」バージョン、と言ってもいいと思う。IE3 で機能的には Netscape Navigator 3 に追いつき、部分的には Netscape Navigator を超えることにも成功した Microsoft が、本気で Netscape を潰しに行ったバージョン。それが IE4 だ。
もちろん Netscape Communications も Netscape 4 に向けて大規模な機能強化を図っていたわけだけど、それに対して Microsoft も IE4 に独自の新機能を数多く盛り込んだ。いわゆるブラウザ戦争ってやつだ (その後の Mozilla.org 以降の状況を「第 2 次ブラウザ戦争」と言ったりもするらしいけど、IE vs. Netscape の泥臭さに比べたら、お遊びですよ。……とか言い出しちゃうのは歳を取った証拠じゃろうかのう)。
その後、Netscape Communications は大規模機能強化に事実上失敗し、「Netscape Communicator 4 入れると無駄なものがたくさん入ってパソコン重くなるから、Netscape Navigator 4 単体のインストーラで入れるといいよ」「Netscape 4 はすぐ落ちるし、ウィンドウをリサイズする度にリロード走るとかひどいよね」「Java アプレットが市場で失敗したのは Netscape 4 の実装がまずかったから」などなど、一気に悪評を高めていく。一方で IE4 は「なんかもっさりしてるけどそこそこ使えるからこれでもいいかな」的な位置付けを獲得し、Windows に同梱したり統合したりと手を尽くして無理矢理シェアを上げて行った。
後の IE5 ではさらに、Netscape より先に「バージョン 5」を出すことに成功した。これって単に数字の上での話なんだけど、当時の僕の感覚としては、IE が Netscape を抜いたことを象徴するできごとのひとつだった。他方、Netscape Communications はというと、急激にシェアを奪われた結果、Netscape 5 の開発を途中で断念し、オープンソース化する (しかもそのソースが使い物にならなくて Mozilla.org は最初から作り直すことになる) というかたちで「墜落」して終わることになった。
テュルルルル…… (←吹き出しがしぼんで回想が終了した音)
ここでふと現代に戻る訳ですけど。
上記の「Internet Explorer 4.0 紹介ビデオ」を見ていて、IE8 を思い出したんですよ。先日、IE8 の新機能である Web スライスを使ってみた時にもうっすら感じてたことだけど、IE8 の新機能 (Web スライスとかアクセラレータとか) って、なんか使いにくいし、いまいち「これは流行る!!」って気配がしないよね。で、上のビデオを見て、IE4 頃の時代背景と、IE8 頃の時代背景がちょっと似てるなと思ったわけ。IE3 で Netscape に追いついた後、IE4 で新機能を盛り込んで勝ちを狙ったのと同じように、IE7 で Firefox に追いついて、IE8 で新機能を盛り込んでみるっていう。しかも、IE4 の新機能がいまいち使いづらくてあまり喜ばれなかったのと、IE8 の新機能もなんか使いにくい。
IE4 の新機能の多くは、技術的におかしかったというわけじゃない。アクティブデスクトップは Mac に対抗するかたちで Windows Vista のサイドバーガジェットとして復活してるし、Windows 7 ではガジェットがデスクトップ上の任意の位置に置けるようになるらしい。どうみてもアクティブデスクトップです。また、プッシュ配信だって、当時は「旬の新技術」扱いされてて、Netscape でも似たようなことをやってたし、後の RSS (あるいは Web スライス) とやってることは同じだ。ただし、実装がまずかった。UI 的に不便だったり、当時のインターネット接続状況 (=テレホーダイ時代) にも合っていなかったり、用意されているコンテンツがニーズに合っていなかった。全体として、「顧客が本当に必要なもの」からかけ離れていた。だから廃れた。
ピコーン! (←どうでもいいことを閃いた音)
IE4 で導入されてその後廃れた新機能は、IE7 までにその多くが廃止されるか別のものに置き換えられている。
歴史が繰り返されているのだとすると、今後の展開は、IE8 が「そこそこ使えるからこれでもいいかな」ポジションを確立し、IE9 あたりでひとり勝ちになるんだけど、やっぱり IE8 の機能の多くは IE11 までに廃止されたり置き換えられたりする、ということになる。もちろん、IE4 で導入された機能の中で現代まで生き残っているもの (エクスプローラバーとか) もあるので、IE8 のもいくつかは残るのかもね。
以上、昔話に加えて、床屋談義レベルの未来予測をしてみた。もしあたってたら、誰か 1 億円ください。はずれたら 5000 万でいいです。