する方? される方?

オンラインゲームを遊ぶプレイヤーの中で時々話題に上る言葉がある。
それは「課金する」と「オファーする」である。

誰が誰に課金する?

課金とは、お金の支払いを課すことだ。したがって、オンラインゲームの利用料金について「課金する」と言う場合、主語はゲームの提供側のはず。ところが、ネットの掲示板やブログなんかを見ていると、客 (プレイヤー) が主語になっていることが、結構ある。

「あの新作のやつ、お試し期間だけタダで遊んで終わりにするつもりだったんだけど。
 やってたらだんだん面白くなっててきたから、結局課金しちゃったよ」

これは「お金を払っちゃいましたよ」という意味だ。明らかに誤用なのだが、すでに広まってしまっており、いまさら訂正して回っても誰も聞く耳を持たないだろう。掲示板なんかでこの話題が取り上げられているのも何度か見たが、「もはや手遅れ。通じるからいいよもう」が毎度の結論である。

オファーする? オファーを受ける?

同じように主語が入れ替わってしまった例に、「オファーする」がある。
オンラインゲームでないものも含めて、RPG にはしばしばクエストという仕組みが用意されている。平たく言えば街の住民からの依頼のことだ。主人公の冒険者は、「どこかに落としてしまった指輪を探してほしい」とか「最近、街道に魔物が出て物騒なので、スライムを 5 匹倒してほしい」といった様々な依頼を住民から受ける。目的を達成すると住民からお金やアイテムがもらえたり、経験値が手に入ったりする。
で、この、依頼について使われるのが「オファーする」という言葉なんだけど、僕は「仕事をオファーする」というのと同じ趣旨で使っていた。すなわち、

  • 街の住民が冒険者に対してクエストをオファーする
    • 「この小包を隣街のメアリーさんのところに届けてもらえないだろうか」
  • 冒険者が、オファーを受ける
    • 「わかりました。任せてください」

ゲームの作りによっては、話を聞いた時点でクエストを受けたことになるので、このように 2 段階に分けて考えるのがぴんとこない人もいるかもしれない。しかし、いくつかの RPG では実際に、依頼された後に受託するか断るかの選択肢が表示される。FF11FF14 はそうだし、オフライン RPG だとゼノブレイドなんかはこのタイプだ。
ところが、これも「課金する」と同じように、冒険者がクエストを受けることを指して「オファーする」という人が相当数いる。

「この前教えてもらったクエスト、なんかオファーできないと思ったら、条件を満たしてなかったみたい。
 別のクエストを先にクリアしてないと、オファーできないんだってさ」

プレイヤーだけかと思っていたが、FF11 の公式サイトですら、最近こっちの使い方をしているのを見た。まぁ、スクウェアエニックスの場合、FF14 の公式サイトに「Windows Update適応する」とか書いていたから、この辺の文書を書いている人が言葉の使い方に無頓着なだけかもしれないが。
この「オファーする」についても、掲示板などでたまに話題になるようだ。

うーむ

結局のところ、オンラインゲームとかやっているのは若年層が多いということなんだろう。課金する側に回ったこともなければ、オファーという言葉を普段使うこともない。その結果、聞きかじった動詞の主語を自分にして捉えてしまった、ということだと想像している。
立場の違う相手が何をやっているのか、考えをめぐらせるのは難しい。