Windows 8 にまつわる誤解

原稿。

はじめに

ほとんどの人は、コンピュータの OS に好みなんてないと思う。あえていうなら「全部嫌い」、という人も多そうだが、僕には気に入った OS というのが過去にいくつかあった。
どういうわけか、僕の気に入った OS は流行らないことが多い。今自宅で使っている Windows Vista もそうだし、昔 BeOS という OS が好きだったが、BeOS は会社ごと潰れてなくなってしまった。
そんな僕が最近気になっているのが Windows 8 だ。案の定、ニュースサイトや blog 等で記事を読むと、使いづらいという感想が多い。記事の内容には納得ができることが多いが、なんとなく誤解されているように思うこともある。そこでここでは、Windows 8 にまつわる誤解に 3 点ほど、反論してみたいと思う。

はじめに 2

ただし、先に言っておくと、Windows 8 が使いづらいという意見に反論するつもりはない。
従来の Windows と同じように使えるデスクトップ画面と、新しく追加された主にタブレット向けの画面があって、両方を行き来しなければならないので煩雑だ、とか、新しいタブレット向けの画面では従来に比べてできなくなっていることがある、といった意見のことだ。
例えば、「画面をだいたい 6 分割にして、そのうち 4 マスに TeraTerm、残り 2 マスに Cygwin Terminal を置く」といった使い方は、タブレット向けの画面ではできないので、いま現に Windows 7 でそういう使い方をしている人にとっては満足がいかないかもしれない。
それは事実なので仕方がない。
今回反論したいのは、もっとおおまかな、Windows 8 に対する印象レベルの誤解に対してだ。

誤解 1

まず、「見た目を新しくすることに力を入れすぎて、使いやすさに注意が払われていない」という誤解がある。
この誤解は、特に今までの Windows を使い慣れている人に多いように思う。しかし、同じ人がスマートフォンを使い始めた時には「Windows と使い勝手が違う! どこに何があるかわからない!」と怒ったりはしていないはずで、別のスタイルの画面だから設計として誤りだということにはならないはずだ。
具体的には、従来のスタートメニューがなくなって、全画面のスタートスクリーンになったことに戸惑う人が多いように思う。けれども、Windows VistaWindows 7 でのデフォルト設定のスタートメニューは、サイズが固定で、項目が多いとスクロールが必要になったり、文字を入力して検索させるような作りになっていた。Windows 8 のスタートスクリーンの方が、表示項目が多い上、縦横に並べることができるので自分の中でアイコンの位置を覚えることもできる。従来のスタートメニューよりも使いやすくなっているはずだ。

誤解 2

次に、「最近タブレットが急に普及し始めたので、急ごしらえでタブレットスタイルの画面が作られた」という誤解がある。
実際には、少なくとも 3 年前には現在の Windows 8 のような画面が検討されていた。証拠となるのが、Microsoft が毎年公開している「未来のオフィスはこうなる」という映像の、2009 年版のものだ。この中に、Windows 8 のような使用感の画面が既に登場している。

Productivity Future Vision (2009)
http://www.youtube.com/watch?v=t5X2PxtvMsU

また、Windows 8タブレットスタイルと同じような画面が、以前からスマートフォンWindows Phone や、ゲーム機の Xbox 360 でも使われている。さらに元をたどれば音楽プレイヤーの Zune にまでさかのぼることができる。Zune 自体はもう売られていないが、画面はよくできていたために、Windows Phone や Xbox 360 を経て、Windows 8 にも取り入れられたという経緯がある。

誤解 3

3 点目として、「先のことなど考えずに設計されたのだろうから、どうせすぐにまたデザインが変更されるだろう」という誤解がある。
最初の方でも書いたように、いまの Windows 8 に対して使いづらいという人が相当数いるので、今後改善されていく可能性は大いにある。ただ、Windows 8 が先のことを考えずに設計されたというのは、誤りだと思う。
先ほど、ゲーム機の Xbox 360 でも Windows 8 と同様の画面が採用されていることを書いたが、Xbox 360 では、(周辺機器の Kinnect を接続することで) ゲーム用のコントローラなどを使わずに、自分の手で画面を指して選択したり、手でサッと払うことでスクロールしたりということができるようになっている。
現在の Xbox 360 (用の Kinnect) には制限があり、人間の腕の動きは検知できるが指の動きは検知できない。そのため、画面上のアイコンを選択する場合は、手をかざしてポインタをアイコンの上に移動して、1〜2 秒待つことになっている。しかし、今後 Windows (用の Kinnect) が一般ユーザに使われる頃には、指の動きも検知できるようになっているはずなので、アイコンを指さして、トンと指で叩くようにすれば選択できるなど、より自然に使えるだろう。
Windows 8 の、タブレット向けと言われる画面は、そのような使い方でも快適に使えるように考慮されている。少し前にはてなに掲載された PR 記事でも、Microsoftエヴァンジェリストがそのことをほのめかしていた。

おわりに

Windows 8 は出たばかりということもあり、一般の人が受ける印象が必ずしもいいとはいえないが、相当に考えられた上でリリースされているのも確かだ。
使いやすいコンピュータを探し求めているのであれば、Windows 8 を購入してみるのもそう悪い選択肢ではないだろう。